「七彩天目」と名付けた色鮮やかな技法


白鳳時代から平安時代にかけて、滋賀県東近江に広がる布引山系では須恵器や緑彩陶器が焼かれ、琵琶湖東岸地域の陶器産地として栄えましたが、その後1千年以上もの間途絶えていました。

1970年代になって、新しい陶器の世界を模索していた若き日の陶芸家・小嶋太郎がこの緑彩陶器に魅せられ現代風に再現することに取り組むようになります。その過程で考案されたのが、深みのある透明感を持った多様な色彩の窯変釉を使った絵付けの技法でした。

「七彩天目(ななさいてんもく)」と名付けられたその独特の色彩は、その豊かさゆえに、さまざまな風景や植物など自然の情景を自由な発想で陶器に描き込むくことができる画期的なものでした。布引焼はこの「七彩天目」という色鮮やかな絵付けの技法が切り開いた、新しい陶芸の世界なのです。

作 家

小嶋太郎

kojima taro

陶芸家。1940年宮城県生まれ。
京都と信楽で陶芸を学び、1970年の大阪万国博のシンボル“太陽の塔”の「黒い太陽」の顔のレリーフ(陶板製)を岡本太郎氏と共同制作。
1971年に滋賀県八日市市(現:東近江市)に窯を開き、独自に開発した「七彩天目」と呼ばれる釉薬を使った技法で、優しく色彩豊かな陶板画の世界を切り拓く。
以後、多数の建築レリーフ(ビルの内外装)を手がけると共にオーナメントや食器なども制作、さらにはキッチンなどの住宅の壁面装飾(ウォールアート)にも取り組み、やわらかな「七彩天目」の世界を日常生活のさまざまな場面に拡大する。近年は、アラスカやミシガンなど米国でも個展を開いている。 

1940 宮城県生れ
1945 信楽(滋賀)へ疎開
1958 京都市立日吉ヶ丘高校美術部図案科卒
1959 京都工芸指導所卒
1963~1970 信楽の企業に在職中の7年間、岡本太郎氏の作陶を担当
   (代々木体育館内レリーフ、太陽の塔「黒い太陽」他個展作品等)
1971 東近江市に布引窯創立・独創的な絵付「七彩天目」を完成させる。
   以後国内外の80箇所の施設に壁面レリーフや陶画を設置
   (東レ労働会館・アラスカ大学図書館・滋賀トヨペット他)
2001 県立近代美術館ギャラリー(滋賀)
2002 レイクスペリオルアートギャラリー(米ミシガン州)
2004 ギャラリーアートワークス(米アラスカ州)
2005ギャラリー807函館(北海道)
2006 滋賀県知事賞
2009 統榮文化院(韓国)
2010第20回秀明文化賞受賞
2011 岡本太郎生誕100年記念展示に賛助出品
   日台美術交流会展(台湾高雄市) 
2012紀伊国屋書店新宿本店(東京)
2012日本地球惑星科学連合大会(千葉・幕張メッセ)
2012 ギャラリーアラスカハウス(米アラスカ州)
2013 市立八日市文芸会館(滋賀)
2013~「追求の先に美を拓くものたち展」を西堀栄三郎記念探検の殿堂と共催
2015千早図書館に梟像制作(東京)
2018 甲賀市あいこうか市民ホール(滋賀)
2019東近江市・市政功労賞受章
2020公立甲賀病院にWall Art制作(滋賀)
2021岡本太郎生誕110年記念展示に賛助出品
2022 東近江市・市政功労賞受章

小嶋一浩

kojima kazuhiro

陶芸家。1972年滋賀県生まれ。
芸術大学卒業後、父のもとで創作陶芸を学ぶ。父と二人三脚で布引焼の世界を広げる活動に取り組む。
「ふくろう」をモチーフとした作品を得意とし、身長大の作品から小物類に至るまで「七彩天目」の特性を生かした様々な「ふくろう」を幅広く手がける。近年は、その作品が市役所をはじめとする公共施設や街角などにオブジェとして飾られるようになり、多くの人々の心を癒している。

1972 滋賀県生れ
1991 滋賀県立彦根東高校卒
1995 大阪芸術大学工芸学科陶芸コース卒
   布引焼窯元にて父小嶋太郎に師事
2004八日市市(現東近江市)市政50周年記念モニュメント制作
2008湯島ふくろう亭にて初個展(東京)
  滋賀県立八日市高校Wall Art共同制作
2009同時代ギャラリー(京都)
  リブロ書店・池袋店(東京)
2010神戸花鳥園(神戸)
2011池袋アウルタワー「フクロウの群像」(東京)
  松江フォーゲルパーク(島根)
   日台美術交流会展(台湾高雄市)
2012掛川花鳥園(静岡)
  ギャラリー梟の樹 (東京)
2013阪神百貨店・梅田店(大阪)
2015豊島区役所に「梟の塔」制作(東京)
  百済寺に梟像制作(東近江)
2016大津市北部地域総合消防防災センター
2017P.W.ライブラリー・ギャラリー(米ミシガン州)
2018 東近江大橋欄干の梟像制作
2019 滋賀県工芸美術協会に入会
   滋賀銀行八日市支店壁面作品制作
2021湖東信用金庫緑町支店壁面作品制作

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ふくろうと布引焼

1970年代初めに小嶋太郎によって築かれた工房は、「若松天神社」の大きな森に隣接しています。この森にはふくろうが棲み、いつも工房を見守ってくれているかのようです。そこで「七彩天目(ななさいてんもく)」で焼上げたふくろうに「福籠(福がこもる)」と名付け、窯元のマスコットとしました。 以来「福籠」の置物は布引焼のシンボルとなって多くの人々に親しまれてきました。2004年には地元の市制50周年の記念モニュメントに採用され、市内9カ所に設置されています。また2015年には「ふくろうのまち池袋」とのご縁で東京都豊島区役所に新庁舎完成記念の大型ふくろうモニュメントを制作しました。

東京都豊島区役所「梟の塔」
福籠
東近江市役所「市福」

「建築アート」から

「暮らしのアート」へ

1970年の大阪万博のシンボルが岡本太郎氏の「太陽の塔」であったことはよく知られています。太陽の塔には、現在、過去、未来、の3つの顔が付けられていますが、その中の「黒い太陽」が陶板で作られている事をご存じでしょうか。 実は、小嶋太郎は岡本太郎氏と共に、その過去の顔の制作に取組んだ人物です。そんな経歴もあり、当初はビルなどの壁面を飾る陶板レリーフを制作し、病院、図書館などの建築物を舞台に多くの作品を手がけてきましたが、それはいわば非日常空間を飾る「建築アート」であり、人々の日々の生活シーンからは遠い存在でした。 しかし時代が移り、人々は次第に日常生活の中にアートを取り入れるようになっていきます。80年代の後半になると、リビングや玄関に「布引焼の風景画」を飾りたいという人も増えてきました。そこで小嶋は「ビルの壁面」と共に「住宅の室内」にも活動の舞台を広げます。 現在では、リフォームを機にリビングやキッチン、玄関や浴室の壁面に陶板を取り付けたいという需要も増えてきました。布引焼は「暮らしのアート」の世界を充実させることに力を注ぎ、壁面(ウォールアート)からオブジェ、食器に至るまで、さまざまなシーンのインテリアをトータルに提供することを目指しています。

布引焼ヒストリー

1971年

大阪万博「太陽の塔」の制作に関わった事を最後に、所属していた信楽の陶器メーカーを退社。布引山系を望む滋賀県八日市市(現:東近江市)に窯を築き、新しい陶芸への模索を始める。

1975年~

この頃から建築物の壁面レリーフの仕事が多くなり、滋賀県内はもとより、東京、大阪、神戸、京都などでも多数手がける。同時に「七彩天目」の技法を独自なものに完成させ、1976年に初めての展示会を京都の百貨店画廊で開く。以来、東京銀座の松屋ギャラリーなど各地で展示会を開催し、新しい陶芸の世界を広げていく。

1980年~

「七彩天目」の技法で描いた食器や花器づくりを本格化させる。今日の多彩なテーブルウエアー作品の基盤となる。

1985年~

壁掛け陶板(陶額)に風景画や植物を画きいた、絵画のような室内装飾品が誕生。同時に帽子型花入、人形、茶器など「七彩天目」による新しい感性の作品が次々に生まれる。

1990年~

「七彩天目」の技法で描いた大型陶板の作成に成功、1メートルを超える大作も画くようになり、現在のウォールアート技術の基盤が完成する。

1995年~

「七彩天目」の特徴を駆使した絵付は「樹立」「桜」「こもれび」「太陽からの風」の各シリーズに広がり、それぞれに陶額、食器、花器などトータルに提供出来るようになる。またこの頃、亮子・一浩が製作に加わるようになり、新しい風を吹き込む。

2000年~

2002年に米国ミシガン州のスペリオル湖畔の街Marquetteに招かれ、初の海外個展を1ヶ月に亘って開催、市を挙げての歓迎を受ける。その会期途中でアラスカに向かい、念願のオーロラに遭遇する。アラスカの雄大な自然に魅せられた事やアラスカ大学の赤祖父俊一教授との交流が契機となり、2004年には大学の協力も得てFairbanksで個展を開く。

2005年~

小嶋太郎の曽祖父、祖父、父が暮らした函館を初めて訪れ個展を開催、長年の思いを果たす。また、リビングやキッチンなど住宅内の壁を飾る陶板「ウォールアート」が本格化。北海道松前市の道の駅にもウォールアートが設置された。 太郎は地元有志と「東近江市の芸術を愛する会」を立ち上げ地域の芸術文化育成活動に取り組む。

2010年~

亮子がプライベートブランド「森のこみち」を立ち上げ、独自の活動を開始。 一浩が「黄昏に翔ぶ」シリーズを発表し、フクロウの新しい魅力を発信。それぞれギャラリーや百貨店で新作を発表。

2015年~

一浩が東京都豊島区役所の新庁舎完成記念モニュメントとして大型ふくろうウォールアートを製作。

2020年~

令和元年より「万葉の詠姫」シリーズを発表。今なお布引焼は進化を続けている。


商号株式会社 布引焼窯元
代表者小嶋一浩
資本金1,000万円
創業1971年4月
所在地527-0042 滋賀県東近江市外町466番地
TEL0748-23-1688 FAX0748-23-1695
営業時間 10:00 ~18:00(日曜のみ13:00~18:00)
定休日 水曜日
他の休日 12月30日~1月3日
主な事業壁面レリーフ 陶画パネル 花器 食器 照明具 特注記念品 他
取引銀行滋賀銀行八日市東支店
湖東信用金庫緑町支店
京都銀行八日市支店
ゆうちょ銀行